ネパールのZ世代革命：指導者不在の蜂起が権力のルールを塗り替えた

2025年9月、ネパールで発生した大規模な抗議活動は、指導者不在でありながらも、過去の革命とは一線を画すものであった。SNSの禁止や政府の腐敗に対する不満が爆発したこの運動は、一人のカリスマ的指導者を仰ぐのではなく、集合的な意思決定によって推進された。しかし、この革命は民主主義の象徴である国会議事堂、最高裁判所、そしてシンハ・ドゥルバール（首相官邸）が炎上するなど、激しい混乱と破壊を伴った。その経済的損失は、ネパールの一年間のGDPの半分に迫るとも言われている。

運動の勃発と指導者不在の力

「腐敗に反対する若者たち」というDiscordチャンネルが、革命における非公式な公共広場となった。数千人が参加したこのオンライン空間での議論と投票を経て、暫定首相候補として元最高裁判所長官のスシラ・キルティ氏が選出された。これは、一部の指導者に権力が集中する従来の革命とは異なり、分散型の意思決定が革命の推進力となったことを示している。

革命の代償：犠牲と経済的損失

この抗議活動は、少なくとも74人の死者と2,000人以上の負傷者を出し、破壊行為は首都だけでなく全国に広がった。主要メディアも攻撃の対象となり、ネパール史上でも最も破壊的な48時間となった。経済的損害は数十億ドルに達し、国民生活に深刻な影響を与えた。

革命後の希望と課題

革命後、新技術大臣を擁する暫定政権が発足し、国民に新たな希望を与えている。しかし、過去の革命が指導者への権力委譲という「古いパターン」に陥ったことを踏まえ、今回の革命で得た「権力は国民にある」という真実を、今後どのように維持していくかが問われている。

ネパールの政治史にみる革命のサイクルとその脱却

ネパールの革命は、単なる偶発的な出来事ではなく、数十年にわたる政治的・経済的矛盾の蓄積が爆発した結果である。過去の革命は、その後の権力構造を根本的に変えることができず、腐敗の新たな温床となるという「サイクルの悲劇」を繰り返してきた。

「政治的基盤」と「政治的超構造」の変遷

ネパールの政治史は、1951年のラーナ独裁政権に対する革命から始まる。その後も、1980年代の民衆運動、1990年代の人民運動I、そしてマオイスト反乱と、革命は繰り返されてきた。しかし、これらの革命は、古い権力構造（政治的基盤）を解体することなく、新たな指導者層がその座に就くだけであった。その結果、民主主義や人民運動の名の下で、新たな機会主義と腐敗が蔓延する「政治的超構造」が形成されてきた。

指導者への依存という「致命的な欠陥」

過去の革命の致命的な欠陥は、指導者への依存にあった。革命家たちが権力を握ると、かつて批判していた腐敗したシステムに組み込まれ、国民の期待を裏切ってきた。Z世代革命における「指導者不在」は、この悪循環を断ち切るための戦略的な強みとなった。

Z世代革命が示す新たな権力の意味

今回のZ世代革命は、単に権力を持つ者を交代させるのではなく、「権力とは何か」というその意味自体を変革しようとする試みである。国民は、もはや誰か「救世主」に希望や主体性、批判的思考を委ねるのではなく、自分たち自身の中に権力を見出した。この革命の教訓は、国民一人ひとりが常に監視し、組織化され、覚醒した市民であり続けることの重要性を示唆している。権力は、常に国民と共に、国民の中にあるべきなのだ。