
医師の無意識の偏見、言葉遣いがヒスパニック系患者の満足度に影響:高レベルの偏見で満足度低下、特定の言語パターンが関係
本研究は、外来診療における医師の無意識の偏見、使用する言葉、そして患者の満足度の間の関連性を調査しました。特に、医師の無意識の偏見が、ヒスパニック系患者の受診体験にどのように影響を与えるかに焦点を当てています。
研究の背景と方法
無意識の偏見とは何か
無意識の偏見とは、個人が自身では意識していない、あるいは自覚しにくい社会的な連想やステレオタイプのことです。医療従事者も、一般の人々と同様に、特定の集団(人種、民族、性的指向など)に対して無意識の偏見を持っている可能性が指摘されています。これが、医療格差の一因となることが懸念されています。
研究デザインと参加者
本研究では、53名の内科および家庭医療の研修医を対象に、抗ヒスパニック系無意識バイアスの測定を行いました。さらに、これらの医師と291名のヒスパニック系患者との間の外来診療のやり取りを録音しました。診療後、患者と医師双方に、やり取りの認識やケアへの満足度に関するアンケート調査を実施しました。医師の言葉遣いは、「Linguistic Inquiry and Word Count (LIWC)」というソフトウェアを用いて分析されました。
主な言語分析変数
分析された言語変数には、一人称単数代名詞の使用頻度、不安を表す言葉、疑問詞、仕事関連の言葉、前置詞、未来や時間に関する言葉、そして言語スタイルの一致度(Language Style Matching: LSM)などが含まれます。これらの言語的特徴が、医師の無意識の偏見と患者の満足度の関係にどのように関わるかが調査されました。
研究結果の概要
無意識の偏見と患者満足度の関係
医師の無意識の偏見と患者満足度の間には、直線的な関係ではなく、二次曲線的な関係が見られました。これは、医師の無意識の偏見が「高いレベル」にある場合にのみ、患者の満足度が低下することを示唆しています。偏見が低い、あるいは中程度のレベルでは、患者満足度への顕著な影響は見られませんでした。
言語使用と患者満足度
一部の言語変数は、医師の無意識の偏見のレベルに関わらず、患者満足度と関連していました。具体的には、仕事関連の言葉を多く使用する医師や、冠詞を多く使用する医師に対して、患者はより高い満足度を示す傾向がありました。この結果は、医師の言葉遣いが患者の受診体験に影響を与える可能性を示唆しています。
言語と無意識の偏見の相互作用
さらに興味深いことに、特定の言語パターンが医師の無意識の偏見と患者満足度の関係を「媒介」することが明らかになりました。特に、医師の無意識の偏見が高い場合、言語スタイルの一致度が高い、あるいは一人称単数代名詞を多く使用すると、患者満足度が低下する傾向が見られました。これは、高レベルの偏見を持つ医師が、これらの言語的特徴を通じて、患者に否定的なメッセージを伝えている可能性を示唆しています。
考察:言葉の裏に隠されたメッセージ
無意識の偏見の伝達経路としての言語
本研究の結果は、医師の無意識の偏見が、言葉遣いを通じて患者に伝達される可能性があることを示唆しています。特に、偏見のレベルが高い医師の場合、一人称単数代名詞の使用(自己中心的または距離を置いたコミュニケーションの可能性)や、患者との言語スタイルの一致(関係構築の試み、あるいは逆に不信感の表れ)が、患者の満足度低下と関連していました。これは、単に言葉の内容だけでなく、その言葉がどのように使われるかが、患者の認識に影響を与えることを示しています。
患者の期待と偏見の閾値
無意識の偏見と患者満足度の間に二次曲線的な関係が見られたことは、患者が医師からのある程度の偏見を予期している、あるいは許容している可能性を示唆しています。患者は、医師の偏見が「許容範囲を超えた」場合にのみ、その影響を強く感じ、満足度が低下するのかもしれません。これは、医師の偏見が、患者の期待値を超えるレベルに達した場合に顕在化することを示唆しています。
今後の展望と医療現場への示唆
本研究は、医師の無意識の偏見が、特に高いレベルにある場合に、ヒスパニック系患者の満足度に影響を与えることを明らかにしました。また、言語使用がこの関係において重要な役割を果たす可能性が示唆されました。医療現場においては、医師が無意識の偏見を認識し、それを抑制するためのコミュニケーション戦略(例えば、患者中心の言葉遣いや、自己中心的な表現の抑制など)を学ぶことが、患者満足度の向上につながる可能性があります。さらなる研究では、言語使用の文脈や、非言語的コミュニケーションとの相互作用についても検討することが重要です。