霊媒状態での文章作成、脳活動は普通とは違う? 質は向上、電気生理学的研究が解明

霊媒状態での文章作成、脳活動は普通とは違う? 質は向上、電気生理学的研究が解明

ウェルネスメンタルヘルス心霊的トランス脳活動EEG変性意識状態書字テキスト

霊媒状態、それは一般的に「変性意識状態」として知られ、解離的かつ非病的な特徴を持つ文化現象として研究されてきました。この状態が言語能力にどのような影響を与えるのか、脳波(EEG)を用いた研究はこれまで限られていました。今回、この謎に迫るため、霊媒師がトランス状態(霊媒状態)で文章を作成する際の脳の電気活動を、健常者による模擬体験と比較する制御EEG研究が実施されました。

研究の概要と方法

研究の目的と背景

本研究は、霊媒師がトランス状態(霊媒状態)で文章を作成する際の脳波(EEG)を定量的に分析し、健常者と比較することを目的としています。特に、トランス状態における脳波のスペクトル特性と、それに伴う言語パフォーマンスの変化を明らかにすることを目指しました。従来の研究では、霊媒状態における脳活動は、主にθ(シータ)波やα(アルファ)波の増加が示唆されていましたが、言語生産といった複雑な認知プロセスとの関連は十分に解明されていませんでした。本研究では、トランス状態での言語生産が、神経振動ダイナミクスにどのような変化をもたらし、かつ言語パフォーマンスが維持されるのかを検証しました。

実験内容と参加者

研究には、経験豊富な霊媒師9名と、彼らと年齢、性別、学歴をマッチさせた健常者9名が参加しました。実験は、通常の覚醒状態での文章作成(WW)と、各グループに特化した文章作成の2段階で行われました。健常者グループは、亡くなった人物になりきって文章を書く「模擬霊媒ライティング(CW)」を、霊媒師グループは、自身の経験に基づいた「霊媒ライティング(PSYC)」を、いずれも自筆で行いました。脳波は64チャンネルEEGを用いて記録され、同時に作成された文章の質も、言語学の専門家3名によって評価されました。

分析手法

EEGデータは、アーチファクト除去後、デルタ(0.5-3.99 Hz)、シータ(4-7.9 Hz)、アルファ(8-13 Hz)、ベータ1(13-19 Hz)、ベータ2(20-30 Hz)の各周波数帯域のパワーを分析しました。テキスト評価は、スペル、語彙選択、文法、文章構成、結束性、一貫性の6つの基準で行われました。統計解析には、混合計画反復測定ANOVAが用いられ、群間および群内での比較が行われました。

研究結果:脳活動と文章の質の変化

霊媒師の文章は質が向上

文章の質に関する評価では、霊媒師グループ(GM)において、トランス状態での霊媒ライティング(PSYC)が、通常の覚醒状態での文章作成(WW)よりも有意に高いスコアを示しました。一方、健常者グループ(CG)では、模擬霊媒ライティング(CW)と覚醒状態での文章作成(WW)の間で、文章の質に有意な差は見られませんでした。この結果は、霊媒師がトランス状態に入ることで、文章作成の質が向上する可能性を示唆しています。

脳波活動の顕著な違い

EEGの定量分析では、霊媒師がトランス状態(PSYC)で文章を作成している際に、健常者が模擬霊媒ライティング(CW)を行っている場合と比較して、シータ、アルファ、ベータ1、ベータ2の各周波数帯域で脳波パワーの増加が観察されました。特に、これらの差は、両グループ共通の覚醒状態での文章作成(WW)との比較では見られませんでした。これは、霊媒師がトランス状態にあるとき、特有の脳活動パターンが現れることを示しています。興味深いことに、健常者グループでは、模擬霊媒ライティング(CW)が通常の文章作成(WW)よりもデルタ波のパワーが低下するという結果が得られました。これは、模擬体験が通常の執筆よりも認知的な負荷が少ない可能性を示唆します。

考察:トランス状態における脳の再編成

言語能力の維持と脳活動の活性化

本研究の結果は、霊媒師がトランス状態において、言語能力を損なうことなく、むしろ文章の質を向上させながら、通常とは異なる脳活動パターンを示していることを明らかにしました。特に、シータ、アルファ、ベータ帯域の同時的なパワー増加は、従来の言語処理における脳活動パターン(低周波数帯の低下と高周波数帯の増加)とは異なり、トランス状態における「独特な脳の再編成」を示唆しています。これは、言語生産に必要な認知資源が、トランス状態においてより効率的に、あるいは異なるメカニズムで動員されている可能性を示唆します。

これまでの知見との比較と今後の展望

従来の霊媒状態に関するEEG研究では、主にθ(シータ)波やα(アルファ)波の増加が報告されていましたが、本研究のように複数の周波数帯域(θ、α、β)の同時的な活動増加が、言語生産という複雑なタスクと関連して観察されたのは新しい知見です。この結果は、トランス状態が単なる意識レベルの低下ではなく、特定の認知機能(この場合は言語生産)をサポートするために、脳のネットワークが再構成される可能性を示唆しています。今後は、さらに大規模なサンプルを用いた研究や、脳のコネクティビティ解析、トランス状態の前後の脳活動比較などを通じて、この現象の神経基盤の解明が期待されます。

画像: AIによる生成