
ディーパ・メータ監督、トランプ氏を「世界で最も危険な男」と断罪 - 現代社会への警鐘と映画の力
映画監督のディーパ・メータ氏は、シンガポール国際映画祭でキャリア功労賞を受賞したことを機に、現在の世界情勢と政治、そしてドナルド・トランプ氏について自身の見解を語りました。メータ氏は、トランプ氏を「世界で最も危険な男の一人」と断じ、その予測不可能な権威主義的な行動が世界に混乱をもたらしていると指摘しています。
グローバル政治の現状と映画の役割
メータ氏は、現在の世界情勢が「かなり厳しい」と述べつつも、情報の伝達速度と範囲が、こうした混乱をより身近で直接的なものに感じさせていると指摘しました。このような状況下で、映画を通してグローバルな問題に取り組むことの意義について、彼女は「Instagramのリールよりも、映画で取り組むことの方が永続的で、したがってより効果的だと感じます」と語り、現代における映画の持つ力と役割を強調しました。
ドナルド・トランプ氏への見解
アメリカのドナルド・トランプ氏の「いじめのような戦術」について問われたメータ氏は、「トランプは今日、世界で最も危険な男の一人です。なぜなら、彼は予測不可能な権威主義者だからです」と述べました。しかし、彼女は同時に「彼が帝国主義を通じて、時代を通じて行われてきたことを何もしていないわけではありません。彼が引き起こす混乱の露骨なやり方が、彼を非常に恐ろしいものにしています」と付け加え、トランプ氏の行動様式が、過去の帝国主義的な手法と共通する部分があるとしつつも、その「露骨さ」が人々を恐怖に陥れる要因であると分析しました。
映画製作における検閲と表現の自由
過去にインド政府から映画『Water』の上映を止められた経験を持つメータ氏は、映画製作者の声が年々ますます圧迫されているかとの問いに対し、「映画が圧迫されるかどうかは、それがどの国の政治から来るかによります」と答えました。そして、「今年の素晴らしいパレスチナ映画の数々は、映画の力に対する大きな希望を与えてくれました」と述べ、政治的状況に関わらず、映画が持つ表現の自由と影響力への希望を語りました。
ディーパ・メータ監督の作品と思想:現代社会への警鐘
ディーパ・メータ監督は、自身の映画製作における信念や、現代社会が抱える課題に対する深い洞察を披露しました。特に、彼女が「最も関連性が高い」と感じる作品や、今後手掛けたいと語るプロジェクトからは、現代社会が直面する分断や差別の問題に対する強い問題意識が伺えます。
「1947: Earth」にみる現代への共鳴
メータ監督は、自身の数ある作品の中でも、「1947: Earth」が、1947年を舞台としながらも、現在のガザ地区で起きている「胸が張り裂けるようなジェノサイド」に通じるものがあるため、最も関連性が高いと感じていると語りました。この発言は、歴史的な出来事が現代社会の問題とどのように共鳴し、繰り返される悲劇への警鐘となっているかを示唆しています。
「Forgiveness」にみる差別の構造
現在製作中の「Forgiveness」は、第二次世界大戦中にカナダ国内の日系人強制収容所に送られたカナダ市民を題材にした実話に基づいています。「我々が、自国民の『見た目』『服装』あるいは『宗教』が、流行を追う支配政府と異なるという理由で、彼らに何をするのかは、卑劣で胸が痛むことです」とメータ監督は語り、権力による差別や排除の構造に対する強い批判を展開しました。これは、現代社会においても依然として根強く残る、マイノリティへの不寛容さや偏見に対する痛烈なメッセージと言えるでしょう。
「Troilokya」にみる人間の闇
長年の夢であるプロジェクトとして挙げた「Troilokya」は、19世紀のカルカッタに実在した女性連続殺人犯を題材にした映画です。この企画は、人間の心の奥底に潜む闇や、社会が生み出す歪みといった、より普遍的で根源的なテーマを探求しようとするメータ監督の意欲を示唆しています。
プロパガンダ映画への警鐘
「親政府的な映画が、パキスタンを敵として描く」という風潮に対して、メータ監督は「それらの映画の多くは、残念ながら期待されるレベルに達していません」と批判的な見解を示しました。これは、芸術が政治的なプロパガンダの道具として利用されることへの懸念であり、表現の自由と芸術的誠実さを重んじる彼女の姿勢を反映しています。メータ監督の作品と思想は、現代社会が抱える分断、差別、そして権力の濫用といった問題に対し、私たちに深い問いを投げかけています。